〈カルチョビットA〉　小倉抹茶スパーズの軌跡（２）「新メンバー加入」

はじめての練習試合をなんとかドローで発信したもの、まだまだ私の前途は多難だった。そもそも、私は”元の世界”ではただのサラリーマンで、サッカーはマンガを読んで知ったくらいの知識しかない。そんな私が、一番下位のリーグとはいえ、この国に32チームしかないプロのクラブの監督を任されてしまったのだ。

正直、これから先のことを考えると頭が痛いが、そうもいってばかりいられない。まずはできることからはじめていこうと思う。

1年目3月2週目　小倉抹茶スパーズの仲間たち

N市に本拠地をおく小倉抹茶スパーズは、青色のユニフォームに金色の獅子のエンブレムがトレードマークで、発足したばかりの新しいクラブだ。所属選手は現在15名。まずは、この現存戦力15名についてしっかり頭に叩き込んでおくことからスタートしようと思う。

[su_note note_color=”#fef88d”]〈選手の各パラメーター〉

キック：ボールを蹴る力の強さとシュートの正確さを表す。ストライカーに必要な能力。

スピード：走る速さ。パスに追いつくかどうかや、ドリブル突破にも影響。

スタミナ：試合中の運動量に影響。低いと、試合中に疲れてスピードが遅くなったり、走れなくなったりする。

テクニック：ボールのキープ、トラップ、タックルなど、 ボールの扱いに関わる技術。

フィジカル：身体的な強さ。高いと、当たりが強くなって競り合いが有利に。疲労の回復の早さにも影響。フィジカルが弱いと、ラフプレーなどで怪我をしやすくなる。[/su_note]

練習で選手たちの身体や動きを見るコーチの目は厳しい。まだまだ発展途上の選手ばかりのようだ。このクラブでは選手にかける年間予算9,000万円。それに対し、現在の年棒総額は8,000万円。あと1,000万円を補強に使える状態だ。とりあえず、この予算で補強できそうな選手を探してみようと考え、クラブ事務所へと向かうことにする。

練習生「くるみ」の加入

クラブ事務所に向かうと、一人の人物が私のことを待っていた。

「やあ、君がS監督かね。私はN市市長のKだ」

なぜ、K市長がクラブ事務所に！？と秘書の顔を伺ってみるが、その答えを確認する間もなく、K市長はクラブへの思いや、先週の練習試合を見た感想などを熱く語ってくる。そして最後に

「今のチームには、まだまだ華がないがね。だからもう少し華やかな選手を入れることにするでよ」

そういって、足早に去っていった。クラブ事務員にどういうことか確認してみると、市長の一存で「くるみ」という女子選手を雇うことが決まったらしい。N市の市民球団でもある小倉抹茶スパーズは、度々、こういったことがあるという。こうして補強のための予算は残り800万円となった。

やれやれだ。

この時は、まだ、この「くるみ」が小倉抹茶スパーズをけん引するストライカーに成長するとは思いもしなかった。

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