「灰と幻想のグリムガル」は2016年1から3月に放映された異世界ファンタジーです。異世界ものといえば、古くは重力の軽いコーヤコーヤ星で活躍するのび太のように、現実世界では冴えない主人公がいきなり順応し活躍するのが定番ですが、本作では一番弱いとされるゴブリン1匹に6人がかりで大苦戦するシーンからスタートします。
今回は、そんな異世界の生活に戸惑いながら少しずつ成長していく若者たちを描いた「灰と幻想のグリムガル」の感想を書いていこうと思います。
よし、目標。明日はゴブリン倒してパンツ買う
淡い色彩の美しい景色の中、なんかドタバタした駆け出しの冒険者たちが1匹のゴブリンに翻弄される。パーティの編成は盗賊のハルヒロ、暗黒騎士のランタ、神官のマナト、戦士のモグゾー、狩人のユメ、魔法使いのシホルの6人。駆けだしの冒険者にしても、仲間との連携もとれず、何日も1匹のモンスターも倒すことができない様子。お金を稼ぐこともままならず、替えのパンツも買えず、1日の終わりにパンツを洗い、夜はノーパンで過ごしながら
「よし、目標。明日はゴブリン倒してパンツ買う」
これが主人公ハルヒロのセリフです(笑)でも、もし自分がある日いきなりこんな世界で目覚めたら、きっと同じように(むしろもっとみっともないさまに)なるだろうと思い、どんどん物語に引き込まれていきました。
ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ
後からepisode.1のサブタイトル「ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ」を見て、これは3DダンジョンRPGの古典「Wizardry」を元ネタにしていることに気づきました。「Wizardry」では「ささやき - えいしょう - いのり - ねんじろ!」はカント寺院で死者を復活する際のメッセージです。「ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ」でこの世界に目覚めた彼らは、もしかしたら現実世界で死んでこの世界に転生したのでしょうか?
そういえば昔読んだ「Wizardry」を題材とした小説「死と隣り合わせの灰と青春」の冒頭もカント寺院で仲間の老魔法使いの蘇生が失敗するシーンから始まりました。episode.1のサブタイトルはその作品へのオマージュなのかもしれません。
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余談ですが、私の記憶では「ささやき - いのり - えいしょう - ねんじろ!」でしたが、調べてみるとこれはファミコン版の「WizardryⅠ」の場合で、Ⅱ以降は「ささやき - えいしょう - いのり - ねんじろ!」の順番に変わったようです。
英語版だと「murmur – chant – pray – invoke」なので、Ⅰの順番のような気がしますが今となっては真実はわかりません。
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これは命のやり取りなんだ!
「Wizardry」は、冒険者は徐々に歳をとり、高齢になると能力が落ちていくゲームシステムでした。また死者を生き返らせるための呪文は時に失敗し、1度失敗すると「灰」に、2度失敗すると「ロスト」して完全に消えてしまうことも。
同じようにこのグリムガルの世界は、1度失われた命は二度と戻らず、しかもすぐに埋葬しないとノーライフキングの呪いによって動く死体として彷徨うことになってしまいます。だからこそパーティのリーダーで神官のマナトが叫ぶ「命のやり取りなんだ!皆、これは命のやり取りなんだ!! 俺達も相手も、ゴブリンだって真剣なんだ!どんな生き物だって死にたくないだろ!」という言葉にとても重みがありました。
一筋縄ではいかない日常、死と隣り合わせの中での葛藤、それを乗り越えての信頼、心の成長など見どころの多い正統派冒険ファンタジー。そんなストーリーを楽しめる「灰と幻想のグリムガル」ぜひご覧になってみてください。
話数 | サブタイトル |
episode.1 | ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ |
episode.2 | 見習い義勇兵の長い一日 |
episode.3 | ゴブリン袋には俺たちの夢がつまっているか |
episode.4 | 灰の舞う空へ |
episode.5 | 泣くのは弱いからじゃない。耐えられるのは強いからじゃない |
episode.6 | 彼女の場合 |
episode.7 | ゴブリンスレイヤーと呼ばれて |
episode.8 | 君との思い出に |
episode.9 | 休暇の過ごし方 |
episode.10 | リーダーの器じゃないけれど |
episode.11 | 生と死の間で |
episode.12 | また、明日―― |
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